毛細管脱飽和曲線

スタグマイヤーStegemeier(1977)によるトラップメカニズムの考察実験および理論構築を紹介する。まず、トラップはキャピラリー数によって異なる挙動を示すことが分かっている。キャピラリー数は粘性力と毛細管力の比として表される。ここで粘性による圧力降下と毛細管圧力の比をNc*と新しく呼ぶことにすると、Nc*は定量的に表現できる量になる。

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ここから先に進むために、二つの仮定を置く。まず一つはカルマン・コゼニー方程式によって浸透率を表現し、そこに孔隙率φと屈曲度τに典型的な値φ=10%、τ=2を代入する。つまり、

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となる。もう一つは、L/rを10と仮定する。

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これらの仮定により、最終的にNc*は次のような形になる。

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さらにここでの変数項をNcと定義すると、その値は実際の貯留層でおおよそ10-5~10-7程度の値となっている。

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さて、ある典型的な貯留層について非濡れ相の残留飽和率SnwrとNcのプロットを得ると次のようになり、毛細管脱飽和曲線capillary desaturation curve(キャピラリーデサチュレーション曲線またはCDCとも)と呼ばれる。

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この図を例にとると、通常の水圧入では(Ncが10-7~10-5)残留飽和率が30%付近で高止まりしてしまう。増進回収enhanced oil recovery(EOR)の究極的な目標はSnwrを0%にすることであり、Ncを何とかして上げる方策を提案することが貯留層技術者の責任と言える。

なお、貯留層を構成する岩石によって毛細管脱飽和曲線は変化するので、もし異なる岩石のコアが得られた場合は別途プロットしなおす必要がある。また、EORなどで岩石の濡れ性が変化した場合は、毛細管脱飽和曲線も大きく変化するので元の曲線を使うことができない。