ネバダ州半周旅行の話
プレジデントデイの三連休で研究仲間がめいめい散って行ったので私もたまには一人旅に出ることにした。
旅が研究の足しになるかは非常に疑問だが、それでも私はいつも旅行から何かしらのインスピレーションを得てきたではないか、と言い訳をしながらパロアルトを後にしたのであった。一路ネバダ州へ。
- 1日目(走行距離約550マイル=890キロメートル)
12:30 | パロアルト出発 |
US101→SR52 | |
13:30 | カーサ・デ・フルータ(給油) |
SR52→I5→SR58→I15 | |
21:00 | ベイカー(夕食) |
I15 | |
23:00 | ラスベガス到着 |
注) US101=国道101号線、SR152=カリフォルニア州道152号線、I5=州間高速5号線、SR58=カリフォルニア州道58号線、I15州間高速15号線
走行距離890 kmと言うと東京から広島までの距離に相当し、いざこれを一日で走破しようとすると歳のせいか決心が揺らぎ二の足を踏まざるを得ない。しかし20代のころ、高速料金の上限が千円だった恩恵にあずかってさんざん長距離旅行をしたことを思い出し、とりあえずこの日は強い気持ちでカリフォルニア州を南に南に車を進める。途中ベイカーズフィールドで道に迷ったり、山の中で事故渋滞に巻き込まれたりしたが無事にその日のうちにネバダ州に到達する。
驚いたのは、サンフランシスコからロサンゼルスに向かうハイウェイ脇の桜が満開だったこと。おそらくサクランボを栽培しているのだと思うが、何マイルも連なって桜の木が整然とならべられ花をつけていた。どことなくアメリカの合理的畜産農業の香りが漂う光景である。
線路の脇のつぼみが赤いスイートピーだったら狂喜するのだが、ハイウェイ脇の桜並木ならぬ桜畑では情緒も何もないもんだ。こちらで栽培されている桜の花はやや色が白いようだ。
- 2日目(走行距離約700マイル=1150キロメートル)
11:00 | ラスベガス出発 |
I15→US95 | |
12:00 | モンテシート・マーケット・プレイス(給油) |
US95 | |
13:30 | ビーティー(休憩) |
US95 | |
15:00 | トノパ(給油・昼食) |
US95 | |
17:00 | ホーソン(給油) |
US95→US50→I80→I880→SR84 | |
23:00 | パロアルト到着 |
注) I15=州間高速15号線、US95=国道95号線、US50=国道50号線、I80=州間高速80号線、I880=州間高速880号線、SR84=カリフォルニア州道84号線(ダンバートン橋)
青虫はサナギにならなければ蝶々にはなれない…サナギになんかちっともなりたいと思ってないのに(CV今井美樹@おもひでぽろぽろ)
この日の行程は大半が砂漠地帯をただ北に向けて突き進むのみ。ザ、アメリカな砂漠の中を走る訳だが、雄大な景色と広い空の下をドライブするのは実に気分が良い。中学生時代の思い出を考えながらハンドルを握るが、同級生の名前がほとんど思い出せず驚愕する。
緩やかな谷の底を北上するので両脇にずっと岩山が見えており、その奥にはかの有名なエリア51やネバダ核実験場が隠されている。この谷は雨水の浸食でできたものではなく、地溝と呼ばれる大地がひび割れてできたものだという。しかし山肌には水で浸食されたような筋が結構入っていた。砂漠と言えども多少の降水量はあるようで、そのごくわずかな水が跡を残すのだ。
このルートの景色は砂漠が99.99%で、残りがよくわからない軍事基地、刑務所、トレーラーハウス、廃墟、鉱山跡、ガソリンスタンド、売春宿、宇宙人便乗商売の売店(エリア51があるためUFOの聖地のひとつ)と言ったところ。廃墟の大半は1900年前後に全盛期を迎えたゴールドラッシュの残り香である。
個人的におや、と思ったのが、この写真を撮ったビーティBeattyという町の近くで、砂漠の中にぽつんとNUDE GIRLS BIKINISと書いてある建物を見かけたこと。その時は日本の田舎にあるアダルト自販機の類かと思ったが、そんな珍妙なものがアメリカにもあるのかと気になり帰ってから調べてみると果たして合法の売春宿らしい。このあたりの事情はある方が興味深い記事にまとめている。
国道95号線周辺に点在するゴーストタウンについての記事も。
NEWSLOG USA – ゴーストタウンに見る米国の光と影
なお、この日は出発前にLINEで日本にいる妻に向けて、消息を絶ったら死んだと思ってくれと遺書を送りつける。その後ラスベガスを発ち揚々と国道95号線を北上し始めたのだが、突如自動車がガス欠を訴え、急いでラスベガス郊外まで引き返して給油した。次のガソリンスタンドが100マイル先という状況は冗談ではない。すこし肝を冷やした。家に帰ってから無事帰った旨を報告すると、エイリアングッズのお土産は?とのこと。宇宙人好きなのかよ、知らねえよ!
二日目の走行距離は約1150 km。東京から札幌に相当する距離だというが、砂漠の一本道を爆走したせいか、案外近く感じた。旅の途中で話した人にどこまで行くの、と聞かれパロアルトだよ、と答えるとパロアルトってカリフォルニアのかい?と驚かれたのはよい思い出。
最後のこの写真はホーソン郊外にあるウォーカー湖。内陸湖、すなわち流出する河川がない塩湖であり乾燥地帯ならではの湖と言える。