2015年(上)読書の話
2015年の上半期に読んだ本の感想。
☆☆☆:未読または読み途中
★☆☆:うーん。
★★☆:ふつう。
★★★:満足。
- 去年の冬に早稲田を訪問した時に学生さんから勧めてもらった本。最終章にあたる「やや長めの後記」が素晴らしい。行列の演算と西洋の合理主義の考え方をリンクさせておりなかなか説得力がある。勉学に役立つかといえば疑問符が付くが、わかった後に読むとなるほど、となる本だと思う。
☆☆☆ 逆問題の考え方, 植村豊
- 隣の研究室が逆問題に取り組んでおり、ふとした興味から購入。未読。
☆☆☆ 改革歴程, 趙紫陽
- 巻末の関連人物紹介が秀逸であったので買ったが本文はほぼ未読。
★★★ 大地の子(全4巻), 山崎豊子
- 文化大革命期の中国の様子を小説で読みたくなり購入。今の中国だけを見ると、たった40年ほど前に多くの組織が完全破壊され教育すら機能していなかった時代があったことなど想像もつかないだろう。
★★★ 待つ力, 春日武彦
- 社会人になってから待つことの苦痛と大切さを感じていたのでタイトルを見て、いわゆるジャケ買いをした一冊。本書のテーマは人事を尽くして天命を待つ。著者は精神科の先生。
- 自身のソニーでの経験をもとに組織論を展開しているが、主観的な考察が気になる。ソニーを語りたかったのか組織論を語りたかったのか、どちらも中途半端でもったいない。
★★★ カント入門, 石川文康
- 哲学に初めて手を出したが、本書は非常に良い。つまり意味不明でないということ。おすすめ。
★★★ 三国志(全10巻), 吉川英治
- 寝る前などに少しずつ読み4ヶ月ほどで読了。文章が良い。人間世界の普遍性を感じられる。
☆☆☆ 新・水滸伝(全3巻), 吉川英治
- 中国の近代史を勉強すると、たまに水滸伝の話が突然出てくるため、予備知識習得のために購入。三国志と話が混ざりそうなので少し寝かせている。つまり未読。
★★★ 半七捕物帳, 岡本綺堂
- 私のお気に入りのひとつ。同じ話を何度も読んだり、地図や歴史年表を片手に読んだり。もったいないのでまだ全体の2/3くらいのエピソードしか読んでいない。
★★☆ 戦争論, クラウゼヴィッツ
- 漫画バージョン。気休め。
★☆☆ ラストダンス, 堂場瞬一
- Kindleセール中だったので購入。野球の話。あまり現実感がなく漫画のような展開。
★★☆ 柔らかな頰, 桐野夏生
- 生身の女性を描かせたら右に出る者がいない桐野夏生の作品。本作でも女性の心理描写が冴え渡る。が、いつも通り男性登場人物の魅力がいまいち。無骨さに欠けるというか、理想化された宝塚の男役を見ているよう。物語を読ませる筆力は素晴らしいので娯楽作品としては一級品かと。
★★★ 毛沢東三国演義, 牧野武文
- 共産党の言うところの新中国について歴史と地理と人物とが頭の中でよくリンクしていなかったので、そのあたりを簡潔にまとめた資料が欲しくて購入。重要事件をすべて抑えた上で、写真も掲載されており意図せず大当たりであった。副題は、「中国をつくり、中国を破壊した英雄」。なるほど。
★★★ 留学, 遠藤周作
- 留学生の苦悩。舞台はヨーロッパだが、留学に関わるものは一度は読むべきだと思う。
- 日本人論がふと気になり、手近な新書に手を出す。日本人論というより教育論に近かったが意義深い。著者らは直接言及していないが、人間関係の最も基本的な場所は家庭であり、家族の信頼関係を構築することが健やかな人格形成に最も重要だということを感じた。
☆☆☆ Deng Xiaoping and Transformation of China, Ezra Vogel
- 鄧小平の権力闘争と改革について伝記的にまとめた大著。長いので2年くらいかけて読んでいる。いかに善政が退けられるか、いかに失政が正されるか、権力者との付き合い方、権力闘争生き残り方と敗れた人間のその後、正義とは何か、運の要素など、教科書で教えてくれない生々しい人間関係が事実として淡々と描かれており非常に良い。さすが米国の一流研究者の筆。原著は英語だが、邦訳、中国語訳も出ている。
☆☆☆ Broken Genius, Joel N. Shurkin
- シリコンバレーの父といっても良い人物である、ウィリアム・ショックレーの伝記。1/4くらいまでしか読んでいない。