各相におけるモル分率の計算

各相における成分iのモル分率を示すx_iy_iを求めるにはまず気相と液相のモル分率を示すVLを導出しなければならない。実はすでにその道筋は示されていて、成分iについての平衡定数K_iが求っていれば、平衡定数の定義より気相のモル分率を示すVを計算することができる。式の対照性よりVの代わりLを先に求めてもよいが、ここではVを求めることにする。まず、(61)式でも示されているとおり、

(68)   \begin{eqnarray*} \sum_{i}x_i&=&1\\ \sum_{i}y_i&=&1 \end{eqnarray*}

なので、それぞれを比較すると次の式を得ることができる。

(69)   \begin{equation*} \sum_{i}x_i-\sum_{i}y_i=0 \end{equation*}

また、上式の左辺は、(63)、(64)式より、

(70)   \begin{eqnarray*} \sum_{i}x_i-\sum_{i}y_i &=&\sum_{i}\frac{z_i}{1-V(1-K_i)}-\sum_{i}K_i{x_i}\\ &=&\sum_{i}\frac{z_i}{1-V(1-K_i)}-\sum_{i}\frac{K_i{z_i}}{1-V(1-K_i)}\\ &=&\sum_{i}\frac{z_i(1-K_i)}{1-V(1-K_i)} \end{eqnarray*}

のように書くことができ、(69)式と組み合わせると以下のようなVについての方程式が導ける。

(71)   \begin{equation*} \sum_{i}\frac{z_i(1-K_i)}{1-V(1-K_i)}=0 \end{equation*}

求められた式を見ると、z_iはフィードとして与えられており、K_iは求めたばかりなので、結局V一変数のみについての方程式となっていることが分かる。さてここで、関数f

(72)   \begin{equation*} f(V)=\sum_{i}\frac{z_i(1-K_i)}{1-V(1-K_i)} \end{equation*}

のように定義すると、

(73)   \begin{equation*} f(V)=0 \end{equation*}

なる方程式の解が求めるVということになる。この方程式はラッシュフォード・ライス方程式Rachford-Rice equationと呼ばれることがある。ラッシュフォード・ライス方程式を解くには、二分法bisection methodがまずは用いられる。(一次元の)ニュートン・ラフソン法を使って数値的に解く手法や、二分法とニュートン・ラフソン法を組み合わせた混合ニュートン二分法mixed Newton-bisection methodも用いられる。ニュートン・ラフソン法によって方程式を解く際には(72)式の一次導関数が必要なのでここで示しておく。

(74)   \begin{equation*} f'(V)=\sum_{i}\frac{z_i(1-K_i)^2}{[1-V(1-K_i)]^2} \end{equation*}

計算されたVの値を(63)、(64)式にすでに求められているz_iおよびK_iとともに代入するとそれぞれx_iy_iの値を得ることができる。なお、Vが極めて小さくなると思われる場合は、Vの代わりにLについて解けばよく、その場合ラッシュフォード・ライス方程式は、

(75)   \begin{equation*} f(L)=\sum_{i}\frac{z_i(1-K_i)}{K_i+L(1-K_i)} \end{equation*}

となる。また、その一次導関数は、

(76)   \begin{equation*} f'(L)=\sum_{i}\frac{-z_i(1-K_i)^2}{[K_i+L(1-K_i)]^2} \end{equation*}

である。