毛細管圧力曲線

排出過程と浸潤過程の様子を今一度ここでまとめて、毛細管圧力曲線についての理解を深めたいと思う。黒の曲線が排出過程drainage processであり、赤の曲線が浸潤過程imbibition processである。

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最初濡れ相で満たされたコアを非濡れ相で置換してゆく。点0(一番右端)から排出が始まり、そのまま圧力をかけてゆくと点5に至り、ここからはほとんど水が排出されなくなる。これが通常の排出過程である。点0での毛細管圧力が0にならない理由は前の記事を参照してほしい。

排出過程の途中で非濡れ相による置換をやめて、浸潤過程に入るとどうなるか。これは例えば点1に至った時点で排出と浸潤を切り替えることに相当する。このような場合、押し込んだ非濡れ相(油)の一部がトラップされてしまうので、濡れ相(水)飽和率が1.0まで戻りきらない。点2からまたもう一度排出過程に戻すと点1まで違うルートをたどって戻り、そこからは元の排出過程のルートに乗る。つまり、点1と点2の間に存在するループは可逆的である。点2から点1に戻るときに圧力が0から始まることは一見奇妙に思えるかも知れないが、これは点2の時点ですでに非濡れ相の流体が最大の孔隙にトラップされており、非濡れ相流体を再度押し込むとすぐにそのトラップされた部分と連絡するからである。

なかなか言葉を尽くして説明しにくい部分であるので、点0から点6まで各相がどのように配置しているかを漫画的に描いてみる。ただし、Wは濡れ相、N.W.は非濡れ相を示す。

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このように整理すると、特に浸潤過程の毛細管圧力曲線は非濡れ相の連続性に依存していることがよく分かる。つまり、毛細管圧力曲線の形状を決めるのは各相の連続性であると言え、別の言い方をすれば、孔隙径分布の良い指標であるとも言える。

もう少し毛細管圧力曲線の形状について観察してみよう。

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ある毛細管圧力に注目すると、排出過程と浸潤過程で異なる濡れ相飽和率を持っている。このうち、浸潤過程の濡れ相飽和率(B)は濡れ相が連続的に流れている飽和率を示しており、図中でSnwfと書いた部分(1 – C)は非濡れ相が連続的に流れている飽和率を示している。残り(C – B)は非濡れ相がトラップされている飽和率ということになる。浸潤過程が進んでゆくと、スナップオフとバイパス化によってトラップされる非濡れ相の量が増えていく様子が視覚的に分かる。

点A浸潤過程の終点であり、このときの非濡れ相飽和率をは(Snwr)maxとの記号で表す。これはいわゆる残留油飽和率residual oil saturationに相当する飽和率で、水で押して取ることができないトラップされてしまう油の量を表す。石油開発の世界では、(Snwr)maxが高止まりすることは収益を損なうことに他ならないため、なんとかしてこれを下げようとするのが技術者の役目である。究極的には界面張力を0にすることができればすべての非濡れ相流体を取り出すことができるので、例えば界面活性剤surfactantの圧入や、ミシブル攻法などが検討される。