さて、毛細管圧力が無視できる場合、フラクショナルフロー関数は次のように書くことができる。
ただし、
であり、θは貯留層の傾斜角dip angleである。また、重力数gravity number(Ng)を
のように定義すると、フラクショナルフロー関数は結局以下のようになる。
つまり、毛細管圧力の影響が無視できるときのフラクショナルフロー関数は、飽和率、重力数、傾斜角の関数であることが示されている。
なお、すでに与えられている定義を用いた簡単な演算より、
であることが分かるので、これを代入すると、フラクショナルフロー関数が実際に既知のデータから計算することが可能となる。
さらに、相対浸透率について、無次元相対浸透率dimensionless relative permeabilityなる概念を導入すると、次のように整理される。
(47)
無次元相対浸透率とは、相対浸透率をエンドポイントendpoint(相対浸透率の最大値)で除した値である。
次に、エンドポイントにおける易動度比mobility ratioをM0と表す。
(50)
この値を用いるとフラクショナルフロー関数は結局次の形となり、飽和率、重力数、傾斜角、易動度比の関数として与えられる。
相対浸透率を与える相関式はいくつも提唱されているが、例えばホナールプールHonarpourの式が有名である。
この式を使って、フラクショナルフロー関数をプロットすると、重力の影響が存在しない場合のS型の曲線形状になるが、重力数Ngやエンドポイントの易動度比M0の違いによって、その形状に異なった特徴が現れることが分かる。
重力数は粘性力と浮力の比(buoyancy/viscous force)である。もし重力数が大きければ、逆流現象counter-current flowが生じフラクショナルフロー曲線は負の領域に突入する。さらに浮力が極めて強いときはフラクショナルフロー曲線が1以上の領域に現れる。
また、エンドポイント易動度比が大きいときは掃攻効率が低くなる。この議論は重要なので別途展開する。