熱力学の章で議論してきた相平衡の条件と、先に議論した状態方程式を組み合わせて、任意の条件を与えたときの相平衡状態を求める手法である相平衡計算phase equilibrium calculationについて述べる。相平衡計算とは、液相と気相の比率や、各相に分配されている分子のモル分率を任意の条件で計算する手法である。フラッシュ計算flash calculationと呼ぶことも多いので、本書でも相平衡計算のことをフラッシュ計算と称することにする。特に気液二相のときは、系の圧力、温度、そして含まれている分子のモル分率を与えて、それぞれの相に分配される分子の割合と、各相内でのモル分率を求めることを(二相)フラッシュ計算two-phase flash calculationと呼んでいる。また、圧力と温度を与えて、各相の残りの状態量を求める手法をPTフラッシュと言うが、体積と温度を固定するVTフラッシュ、内部エネルギーと体積を固定するUVフラッシュ、圧力とエンタルピーを固定するPHフラッシュ、圧力とエントロピーを固定するPSフラッシュ、エンタルピーとエントロピーを固定するHSフラッシュなる手法も存在する。ここではPTフラッシュを前提に話を進める。
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